詩をおいておくところ

1984年生まれ。詩を書いては残しします。

紙でできた牛 その6

原付をレンタルして中国国境までの山道へ向かう。
このあたりから意志も感受性も随分ピントがばっちりになってくる。
黒タイダム族、アカ族等の少数民族が集落を成す山間部だ。
ディーゼル車が恐ろしい排気を伴って森林生い茂る山道の中を走っていく。
大きな豚の死骸に夥しいウジが沸いている。
日向で鶏の親子が行進している。
山の中腹で掘っ建て小屋があった。側にたくさんのバイクが停めてある。
もうもはや運命の只中にいてどう転んでもいいや、神様はサイコロを振らねえ、と言わんばかりの気合入っているんでヨロシク的テンションでドアを開けると中は簡易なビリヤード場だった。
5.6人の男がてめえ誰だというような表情で暗闇の中からぎらり光る眼を浮かばせる。
いや、日本から来て旅行で暑いもんでちょっと涼ませてもらえたらいいかなあなんてえへへへ等とたどたどしい英語で伝えると、ラオス人とも中国人ともつかないような風貌の男が、こんにちは、おはよう、はじめまして!と綺麗な日本語で話しかけてきた。
え、なんで日本語しゃべれるの?
と聞くと、昔、日本がバブルで隆盛を極めていた時に、これからは日本語を喋れると役に立つかもしれないということで学校教育に組み込まれていたらしい。
日の光が漏れるタバコ臭いビリヤード場はあっという間に異文化交流の場となる。
壁の隅に張り付いて怪訝な顔をしていた子供達6人も、状況が飲み込めたようで口々にこんにちは、おはよう、はじめまして、と言う。
本当にこんにちは。本当におはよう。本当にはじめましての世界。