詩をおいておくところ

1984年生まれ。詩を書いては残しします。

紙でできた牛 その8

僕は、いつか食べる家畜をこんな風に愛情一杯に育てるのは不思議だ、と思ったが今目の前で新聞紙を小さくヒナの口の大きさに無理がないようストローのように丸めて餌を与えている男の姿を見て、これは理屈を超えて正しいのだ。とすぐ感じた。
ここにはペットと家畜の差が無い。
野良と家飼育の差も無い。
動物がいて、人がいて、雨が降って、日が射して。
僕は単純なので状況を見て簡単に解きほぐれてしまう。
日本で染み付いた文脈や常識は通用しない。
最悪、原付が壊れたり、奪われたら、ここで生きていこうというイージーな気持ちでさらに北へ向かう。
もはや目標なんか全然無い。
国境を見たい。
森林に次ぐ森林。
土砂を巻き込む真っ赤な川。
自分の身体程もある薪の束を平気な顔をして担いでいく老婆。
女かハシシ買わねえかと肩を叩く前歯のないおっさん。
僕は強い無目的の意志に貫かれてる状態なので、快楽には揺さぶられない。
嘘。ビールは度々飲んだ。
マリオカート気分でフルスロットルで山道を運転したので、昼に出発して夕方前には目的地のムアンシンに着いた。