詩をおいておくところ

1984年生まれ。詩を書いては残しします。

逆さの日記

病院の廊下には朝の青白い日差し

 

僕は泣いている人や神妙な面持ちの人に囲まれながら息をしている

 

それもだんだん苦しくなってきて

僕は今までずっと息をしていたんだな、と思う

そしてしばらく薄明かりだけの夢を見て

ふっつりと僕の命は途絶える

手や足から温かみが抜けて行って

温められたよろこびや

温めた嬉しさも消え失せる

随分わかかったね、などの声を聞きながら

祖母に夏の祭りに連れていってもらったことを思い出しながら突然全てが無くなる

 

思えばいままでぼくはなにをしようとしていたのだろう

必死になって何か集めて大事にしては

最後の最後にはこの世にすべてを返却しなければいけない

肌理の細かい砂をすくいあげてざるに入れていくように辛いことも大事なことも一定の名残のあと過ぎ去ってゆく

愛や心配などといってその人が都合のよいほうに留まるわけでなく

人は水のように淀むなり腐るなり流れゆくなりした

思い出だってそうだ

永遠だと思っていた日々も遠く昔、いまはおぼろげなイメージしかない

物質もまるで砂浜に置いた貝や石のように、刺激を受けては時間の波に流されていった

 

僕たちは、僕たちはそれぞれ一定時間を有したタンパク質や水分等にくるまれたいのちであった

その身体そのものが人生あるうちたったひとつの財産で、それら同士が心を通わせていたのだ

 

すさまじい驚きだ

すさまじい驚きだったのだな

なごりおしいな

 

僕は第3銀河系の星すべての数とちょうど同じ数、心臓を動かした後死んだ